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今も新しい昭和。 福田平八郎と日本画モダン展 [見たもの読んだもの日記]

雨の季節に。

どアップです.jpg


予告通り行ってまいりました。

福田平八郎と日本画モダン展


DSC04146.JPG


近代日本画の中で、迷うことなく一番好き!と言えるのが、福田平八郎。
学生のときに知って以来、その位置は不動なのですが、なかなかまとめて見る機会がありませんでした。

福田平八郎(1892-1974)
実は、日本の近代美術についての本などに、必ずといっていいほど登場する名前です。
近代日本画の到達点のひとつを示した作家だと思います。


その名作のひとつ、「漣」(1932)。

全体はぜひ公式サイトで.jpg


(部分です。全体の画像は美術館のサイトへ→こちら 以下同じです。)

これが見たくて前期に行きました。
銀地に群青一色で、水面の波を描いています。
写生を重ねて色と形を追求した結果、抽象絵画の一歩手前のようなミニマルな表現になっています。
その上、銀屏風に描いたこともあって、琳派などを思わせる装飾性を見せています。
発表当時、図案のようだと言われたようですが、実際に見ると、絵具のわずかなにじみや、描いた手の動きが感じられる、生々しい「絵」。
これが昭和7年に描かれているという驚き!

ちなみにこれ、ずっと銀屏風だと思っていましたが、実は金箔を貼った上にプラチナ箔を重ねて張っていると今回初めて知りました。
というのも、銀屏風を注文したのに間違って金を貼られてしまい、時間もないので急遽上からプラチナ箔を貼ったのだとか。
(ちなみに、箔を貼るのはものすごーく面倒なんだよー。)
会場には、実際に箔を貼った見本がありました。
箔って薄い金属なのに、重ね貼りして色が変わるの?とお思いでしょうが、見本を見ると確かに違います。
(余談だけど、職人さんが手で延ばした純金箔は向こうが透けて見えるんだよー。)
これが当初の注文通り銀屏風だったら、かなり雰囲気が違っていたでしょう。

また、この絵の構想は、釣り好きであった平八郎が、釣れずに水面を見ているときに浮かんできたんだとか。
屏風といい、思うようにいかないことが、名作を生む、というミラクル。


ちなみにこの「漣」、大阪市立近代美術館準備室が所蔵しています。素晴らしいコレクションを持ちながら、財政難に翻弄され、ついに建設が白紙に・・・作品はどうなっちゃうのでしょう。


最初の画像は、もうひとつの名作、「雨」(1953)。

どアップです.jpg


後期のみの展示です。
この作品は東京国立近代美術館にあるので、何度か常設で見ています。
画面構成の主役は明らかに、単純化された表現の瓦なのですが、そこに落ちた雨粒の跡が、雨の降りはじめの一瞬を描き出す。
これまた、絞り込まれた構成要素が、直接描かれていないものまで想起させる、物静かながら深い表現。


この二点は色彩を絞り込んだ作品ですが、平八郎は天性のカラリストと言われる画家でもあります。

色の感じだけでも・・・.jpg


「彩秋」(1943)
柿の紅葉にこれだけの色を見いだせる感覚には、何度見ても感嘆してしまいます。
単純化した形態も実によく練られています。

色彩の美しさだけでなく、ほのぼのとした雰囲気のある画風、ユニークな視点と構図感覚、とにかく大好き。
また、描かれている鳥や魚などの動物、特に鯉は、本人にそっくりで笑ってしまいます。
今回展示されたのは20点ほどですが、もっとまとめて見たいなあ。


ところで、平八郎は、画業の最初からこういった表現を目指していたわけではありません。
大正期には、こんな作品を描いています。

ぽかんとするほど描きこんでる.jpg


「牡丹」(1924)
散りかけた花のしべやら、葉脈やら、呆れるほど(笑)細かく細かく描いてます。
後年の作品が想像できないほど。


速水御舟、徳岡神泉などもそうですが、大正期にはこれでもかというほどの細密描写をし、昭和期に入るとがらっと作風が変わって、それぞれの表現になっていく、というパターンがなぜか多いんです。


その徳岡神泉の「芋図」(1943)

緑青がきれいなのよ.jpg


色も形もかなり単純化し、しかし生命感を欠いた図案のようにならないよう、構図がすごく練られています。
近代美術館の常設展示で見たとき、思わず無心になるほど引き込まれた絵。
神泉の絵には、特有の幽玄な雰囲気があって、見ているとそのオーラに包まれるような気分になります。


福田平八郎をメインに据え、昭和期に新しい表現を目指した日本画の作品群を「日本画モダン」という造語でくくってみたのが、今回の展覧会。
といっても、川端龍子や横山操、東山魁夷などまでいっしょくただと、結局何でもいいわけ?みたいな気にならなくもない(笑)
「今」の日本(絵)画とは何か?という命題は、フェノロサの頃から現在に至るまで、ずーっと続いてるわけだしね。


なんて思いつつも、このあたりの日本画は大好きなので、まとめて見られるのは個人的には大変うれしいです。
図録を見たら後期展示の作品もよさそうだし、また行っちゃおうかな。

ちゅーかそろそろどこかで徳岡神泉展なんて希望~。


最近は今ひとつ地味な存在になってる感のある、近代日本画。
ちゃんと見れば、意外に新鮮な発見があるかもしれません。
「漣」の展示される前期は、今週末の6月24日まで。


福田平八郎と日本画モダン

2012年5月26日~7月22日
山種美術館

http://www.yamatane-museum.jp/


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コメント 10

miyomiyo

小2時間くらい寝ちゃいました。
一晩以上、頭を冷やしてからまた来るです (・_・)(._.)

by miyomiyo (2012-06-18 23:51) 

luces

「漣」が読めませんでした・・・・・。
昭和といえばレトロと単純な思考になりがちですが
こちらの作品は新鮮で新しいです。
by luces (2012-06-19 08:55) 

miyomiyo

モダン、、、、なのか~、近代、、、、なのか~。
なら、ぷにしゃんのスケッチは前衛っつーか、アヴァンギャルドと呼ぶべきだとも思えちゃうです。
んで、写実を真っ向否定しちゃいけないんが暗黙の了解であるかのよーな線を飛び越えて、表現者として見たものを思い思いに表現するっつー態勢になるんは、見る側としては非常に喜ばしいことだと思ってるです。
なんで自分的にゃ~絵文字や洞窟画であろーが、ポップアートやドットペインティングでも理解する気まんまんですケロ、気分にも依るです。
にしても、ぷにしゃんのスケッチのカテが日本画でいーのか気になって、二度寝もまともに出来んです。

by miyomiyo (2012-06-19 22:21) 

響

今日は目の保養の日だったね。
彩秋の柿の葉に青が入ってるのに
ちょっと感動。
by (2012-06-20 10:23) 

肥前のFe

さすが中央 芸術の森に簡単に行ける^^
  漣 情緒を感じます
by 肥前のFe (2012-06-20 15:35) 

しろのぽ

miyomiyoさん

とにかく何か言わないと気が済まないらしい(笑)詳しくは次で。


lucesさん

「さざなみ」ですねー、ワタシは慣れているけど、そうでない方が多いのでした・・・よみがな描けばよかったです。
近代日本画も、明治・大正期の、洋画との関係に悩んだところから、昭和期には一歩進んでいると思います。
意外に新鮮な表現があるものですよ。


再び、北の地のおぢさん

モダンとか近代とかってくくりに、あまり意味がないとは思いますけどね。
日本画の人って、「本質」ってことをよく言うんです。
写実を基本としつつ、写生を繰り返すことによって、対象や自分の視点のエッセンスみたいなものを抽出していく作業と解釈してます。
おぢさんの守備範囲の広さは重々承知なので、展覧会レポとか見てみたい気がするです。
なんかすごい面白いんぢゃないかと期待するですがどーでしょう。
で、日本画描いてないですが、スケッチのしかたはやっぱり日本画描いてた頃から大きく変わらないです。
明暗とか立体感で描くのがもー下手なんです。
日本画科選んだ18歳の自分ってわかってたのねと思うしかないです(笑)


響さん

目の保養はいつだってしちゃいますよ(笑)
柿の紅葉を描いてるのにあの青が入ってて、でもちゃんと紅葉の絵だとわかるところが奇跡的です。


肥前のFeさん

都会が好きでないのに東京から離れられないのは、これがあるからです。
「漣」は、これほどシンプルで、デザイン画みたいなのに、見ると水面に吹く風が感じられるように思います。


by しろのぽ (2012-06-22 21:37) 

hoshizou

美術には詳しくない私です。
そんな私でも、「雨」はすごいと思います。
この雨粒で、写り込んでない景色はもとより、5分後の風景が見えます。
記憶を呼び起こすのですから、人それぞれ違う風景がみえるでしょうが
私は、格子戸のある軒先で、雨宿りしている、夕方の書生が見えます。
すごいアイディアとセンスの持ち主ですね。
by hoshizou (2012-06-23 23:47) 

しろのぽ

hoshizouさん

「雨」のような絵に惹かれるとはなかなかですねー(笑)
ワタシは、ここから雨粒が次々に落ちて、瓦が濡れ色になるまでの映像が見えます。
すべて説明せず見る人に委ねることで、深い表現になっているんですね。
この風景を発見した、平八郎のユニークな視点がすばらしいです。
by しろのぽ (2012-06-26 02:20) 

e-g-g

あぁ、これはちょっと見たかったですね!
山種美術館、少し遠くなってしまいましたが、
上京した折にでも。
(というより「それ」を目指していくべきですね)

by e-g-g (2012-07-01 20:12) 

しろのぽ

e-g-gさん

遠くにお引っ越しされてしまいましたものね。
まだ何かとお忙しいでしょうし・・・
いつか行かれた時には、図録だけでも、とお勧めしたいのですが、今回の図録は小さくてあまり魅力が伝わらないかもしれません。
「上京」される機会がありましたら、ぜひ。
by しろのぽ (2012-07-02 17:26) 

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